資産除去債務に関する会計基準

はじめに

国際的な会計基準のコンバージェンス化に伴い、「資産除去債務に関する会計基準」及び「資産除去債務に関する会計基準の運用指針」が2008年3月1日付けで公表され、これらの会計基準及び適用指針が2010年4月1日以降開始する事業年度から適用されることとなりました。
資産除去債務とは、有形固定資産の除去に伴う将来の支出金額を負債に計上し、除去発生時における支出金額の現在価値を有形固定資産の帳簿価額に加えることにより、資産の除去に伴う法律上又はこれに準ずる義務を当初から認識しようというものです。同会計基準が設定された経緯として有形固定資産の除去に関する将来の負担を財務諸表に反映させることは投資情報として役立つことにあります。

資産除去債務とは

同会計基準では「資産除去債務とは有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。」とされており、その対象としては定期借地権契約における原状回復義務、賃貸借契約における原状回復義務、土壌汚染対策法及び石綿障害予防規則における法的調査業務、ポリ塩化ビフェニルの適正な処理の推進に関する特別措置法における保管・処分義務、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律における回収・破壊義務、廃棄物の処理及び清掃に関する法律における処理義務、建設工事に係る資材の再資源化に関する法律における分別解体等義務等が考えられます。
なお、有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復や修繕はその対象となりません。

資産除去債務に関する会計処理

資産除去債務の会計処理に関しては以下のような会計処理が考えられます。

  1. 将来の支出時点で一度に費用計上する。
  2. 将来の支出に対し当初の取得時点で債務として負担する金額を負債に計上し、その割引価値を取得原価に反映し、負債金額と割引価値との差額は「時の経過による資産除去債務の調整額」として各期に費用計上する資産負債の両建処理。
  3. 当該有形固定資産の使用において各機関に費用として計上し、これに対応する金額を負債に計上する引当金処理。

上記のような会計処理にはそれぞれ合理性があるかと思いますが、同会計基準では国際的な会計基準の考え方と整合するという観点から最終的に②の会計処理方法が採用されました。実際の会計処理としては、資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上したときに、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加え、資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分することとなります。

資産除去債務に関する当社の対応

上記で資産除去債務の例示をさせて頂きましたが、当社では上記の内、(A)定期借地権設定契約における原状回復義務(B)土壌汚染地に係る汚染物質の除去債務について対応させて頂きます。

(A)定期借地権設定契約における現状回復義務

借地権には普通借地権と定期借地権があり、普通借地権には契約の更新、建物買取請求権等、借主保護が法律上与えられていますが、定期借地権では、当事者間の特約により借主に対してこれらの保護が与えられない旨を定めることができます。定期借地権には更に一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権があり、このうち原状回復義務があるのが、一般定期借地権、事業用定期借地権です。これらの原状回復(建物等を解体し土地を更地に戻す行為をいいます。)義務は借主の負担で行うこととされており、その意味において、原状回復に要する支出は借主にとって定期借地権取得の対価の一部を構成するものであるといえます。すなわち、原状回復費用が将来における費用の支出であるとはいえ、これを契約締結時に予め認識しない限り、期間内における土地の安定的利用権を確保する事ができないため、当該費用の支出を単なるキャッシュフローの流出と考えるのではなく、それが利用権という資産の経済価値を構成する一つの要素となり、経済的便益をもたらす源泉となることを考慮し、これに資産性を与えます。
当社では、定期借地権設定時の原状回復に要する割引前将来キャッシュフローの見積もり、及び割引価値を算定させて頂きます。

(B)土壌汚染に係る汚染物質の除去債務

従来の資産概念は将来の経済的便益獲得の能力を備えたものに限定されており、キャッシュフローへの貢献がその条件となっておりました。しかし、同会計基準においては従来の資産概念を拡大し、汚染物質等が存在することによる収益獲得能力の低下を防止し、対象不動産の有する本来の資産価値を維持するために必要な費用として除去費用をとらえ、収益性の観点から支出の性格をとらえるという考え方が導入されました。汚染物質等の除去費用を現時点で認識するという発想は、対象不動産が永続的に収益獲得の能力を維持するために必要不可欠な手段であり、純収益を維持するための条件としてとらえることができます。
当社では将来の土壌汚染の除去費用の算定及び割引価値を土壌汚染調査会社等の環境メンテナンス企業との連携のもと対応させて頂きます。