賃貸不動産の時価等に関する会計基準

はじめに

 目まぐるしく変化する今日の経済環境の影響を受け、企業の会計観は変化しつつあり、元来の取得原価主義では貸借対照表に表示された会計数値の信頼性が損なわれ、貸借対照表の重要な役割である企業の財政状態の表示機能が損なわれる可能性があること、また、IFRS(国際財務報告基準)との調和という観点からも時価の概念が導入されてきました。こうした背景を下に、ASBJ(企業会計基準委員会)は、2008年11月28日、企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(以下「会計基準」とする。)及び企業会計基準運用指針第23号「賃貸等不動産の開示に関する会計基準の運用指針」が公表され2010年3月31日以後終了する事業年度末にかかる財務諸表から、賃貸等不動産の時価表示が求められる事となりました。なお、「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」が適用される会社は金融証券取引法により有価証券報告書等の開示が求められる会社、会社法上の大会社その他委員会設置会社(会計監査法人設置会社を含む)とされ、金融証券取引法により有価証券報告書等の開示が求められる会社としては、上場会社、上場会社の連結子会社・持分法適用会社などが挙げられ、会社法上の大会社は、資本金5億円以上又は負債200億円以上の会社になります。また、大会社でなくても、委員会設置会社であれば対象となります。

賃貸等不動産とは

賃貸等不動産とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタルゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く)をいいます。したがって、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産に含まれません(会計基準第20号第4項)。具体的には以下のような不動産が賃貸等不動産に含まれます。

  1. 貸借対照表において投資不動産(投資の目的で所有する土地、建物、建物その他の不動産)として区分されている不動産
  2. 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
  3. 上記以外で賃貸されている不動産

ここで注意して頂きたいのが、2.将来の使用が見込まれていない遊休不動産については処分によるキャッシュフローしか期待されていないため、時価が企業にとっての価値を示すと考えられる事から、将来の使用が見込まれていない遊休不動産についても賃貸等不動産の扱いとされているという点です。また、以下のような予定のものも賃貸等不動産に含まれます。

  1. 将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産
  2. 継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産
  3. 賃貸を目的として保有されているにもかかわらず、一時期的に借手が存在していない不動産

更にリース取引に関して以下のものは賃貸等不動産に含まれるものとされています。

  1. ファイナンス・リース取引に該当する不動産で、当該不動産が借手において会計基準第20号第4項(前掲)に該当する場合(なお、貸手においては金銭債権等として計上されるため賃貸等不動産には該当しません。)
  2. オペレーティング・リース取引に該当する不動産(貸手においては賃貸等不動産に該当します。なお、借手においては賃貸等不動産に該当しません。)

最後に不動産を信託財産としている信託(不動産信託)の受益者は、原則として、不動産を直接保有する場合と同様の処理をすることから、その信託財産である不動産が企業会計基準第20号第4項(前括)に該当する場合は、受益者は当該不動産の持分割合に相当する部分を賃貸等不動産として取り扱います。

鑑定評価の必要性の有無

 まず以下のチャートを見て頂きたいと思います。

上記フローチャートをご覧頂きますと、総額についての重要性の判断、物件ごとの重要性の判断で場合分けがされています。当該重要性の判断については、貴社自身において判断することとされています。当社は当該重要性の判断につきその補助的役割を担わせて頂きます。また、当該フローチャートで鑑定評価書が必要とされるのは、(C)に該当する場合となります。また、(D)に該当する場合は「意見書」等で対応させて頂きます。なお、(C)に該当する場合で初回に原則的時価評価を行うと、その後、価格形成要因に重要な変化が無いと認められる場合については2回目以降は「意見書」等での対応が可能となっております。しかし、原則的時価評価が行われた時点から長期間経過している場合には、再評価以外の原則的時価評価を行うべきとされており、当該期間の目安として、GIS基準(グローバル投資パフォーマンス基準)において、不動産投資は「少なくとも36ヶ月ごとに外部評価しなければならない。」と規定されていることからも、3年を目安に原則的時価評価を行うべきとされています。

開示例(参考)

開示の方法には賃貸等不動産を一括して注記する場合、賃貸等不動産を管理状況に応じて区分して注記する場合、賃貸等不動産として使用される部分を区分しないで開示する場合等が考えられますが、以下賃貸等不動産を管理状況に応じて区分して注記する場合を例にとって財務諸表への開示方法を例示したいと思います。なお、記載方法については企業の実情に応じて異なります。

(例)賃貸オフィスビル、賃貸商業施設、賃貸住宅を所有している場合

賃貸不動産の連結貸借対照表計上額、当期増減額、時価は次のとおりです。

(注1)連結貸借対照表計上額は、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を向上した金額です。
(注2)当期増減額の内、主な増加額は次の通りであります。
         オフィスビルAの取得(+1,000百万円)
(注3)当期増減額の内、主な減少額は次の通りであります。
         商業施設Aの売却(-500百万円)、賃貸住宅Aの売却(-500万円)
(注4)当期末の時価は。主要な物件については社外の不動産鑑定士による不動産鑑定評価書に基づく金額、その他の物件については社外の不動産鑑定士による「不動産鑑定評価基準」に基づいて算定した金額であります。但し、第三者からの取得時や直近の評価時点から、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に重要な変動が生じていない場合には当該評価額や指標を用いて調整した金額によっております。また、当期に新規に取得したものについては、時価の変動が軽微であると考えられるため、連結貸借対照表計上額をもって時価としております。